化学物質の室内濃度が高かった場合の対策
新築やリフォームした住宅やビルにおける化学物質濃度の測定結果が、厚生労働省の指針値を超えていた場合の対策として検討する。
1 換気・通風の励行
室内の化学物質濃度は、換気や通風を繰り返して行うことにより下げられる。発生原因が特定できない場合であっても、効果がある。
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時間換気システムがあって、換気量の切替ができる場合は、「強モード」で運転する。また局所換気設備(台所、トイレ、浴室等の換気設備)もできるだけ動かすように努める。
2 設計図書等の調査による原因の推定
原因の推定にあたっては、設計図書、設計監理記録、工事管理記録などの調査、建材メーカーへの問い合わせ、MSDSの取り寄せなどにより、どのような建材が使用されているかについてチェックを行う。また24時間喚起システムの有無や喚起経路、急排気口の位置、喚起能力などチェックも行う。この場合、必要に応じてさらに濃度測定を行う。測定は、全ての居室について実施することが理想だが、同様の建材を使用している居室については、いずれかの居室を選んで測定すれば、他の居室は省略することも考えられる。また、収納部分からの臭いが気になるといった場合には、収納部分を測定するとよい。なお、入居後、すでに室内に家具や備品が持ち込まれ、生活や活動が行われている場合、建材、家具、生活用品、生活習慣等が原因として考えられる。各居室の設計図書や濃度測定結果等の分析を行うとともに、現場に行って、家具、生活用品、置き敷きカーペット、カーテン等について、どのような材料が使われているかを調べる。
3 建材が原因と思われる場合
建材(塗料や接着剤、キッチンシステム、造作家具等を含む)からの化学物質の発散が原因ではないかと推定されたものの、発散物質や発散量を詳細に把握する必要がある場合は、それを実証するための測定を行う。例えば、パッシブ型測定機器を調査しようとする建材の近くに置いて測定し、その測定結果から発生源を推定する方法が考えられる。また現場で測定しなくとも、全く同じ建材をメーカーから取り寄せたり、現場の建材の一部を切り取り、発生源となっている建材を特定することができる。
4 換気の不足が原因と思われる場合
換気量や室内の空気の詳細な流れなどを測定する必要がある場合は、流量計を用いて給気口、排気口等で測定し、室内が満遍なく換気されているかどうか、空気がよどんでいるところがないかどうか調査する。正確な換気回数は、必ずしも一般的な方法ではないが、室内に炭酸ガスを放出し、時間経過による濃度の低減度合いを測定した結果から計算できる。
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時間換気システムが設置されているものの、空気の流れが短絡している、計画通りの換気量が確保されていないことが原因とわかった場合は、換気設備等を改善する。方法としては
・給気口または排気口の位置を変える
・ダクトを増設して確実な給排気をはかる
・ファンの能力を高いものに換える
・フィルター等を清掃する
・換気経路上、支障となっている建具の通気性を改善する
などが考えられる。
5 建材の交換
発生源と特定された建材を除去し、新たに化学物質の発散の少ない建材などに置き換える方法である。新たに施工する建材には、建築基準法を参考に、ホルムアルデヒド等の発散がない、又は発散が極めて少ない建材(F☆☆☆☆など)を選ぶ必要がある。ただし、施工時に化学物質を発散する接着剤や塗料等を使用すると、かえって逆効果となることがあるので注意が必要である。
なお、ホルムアルデヒド等の発散がない建材としては以下のようなものがある。
・床
材:無垢の木質フローリング、純ウール製カーペット、大理石やタイル、防虫処理薬剤を含まない畳、備長炭入り畳など・壁
材:漆喰、プラスター、珪藻土系塗り材、シラス系塗り材、紙製壁紙、繊維製壁紙、大理石、多孔質のセラミックスタイル、セラミックスボード、天然ゼオライト系壁材など。天井材:ロックウール系天井材、化学吸着剤を配合したロックウール天井材など。
6 空気清浄機の設置
化学物質の低減に効果があると言われている空気清浄機を室内に置いて稼動させる。いろいろな種類があり、ホルムアルデヒドを吸着分解するもの、VOC
に対する効果があるものもある。その効果や持続性については必ずしも明確ではないが、カタログに示された性能を参考に選択する必要がある。
上記の対策は、原因が不明でも適用できる利点があるが、あくまで対症療法的な方法である。また、換気と違ってすべての化学物質に有効な方法ではないことにも注意してほしい。
7 発散を抑制する方法
フローリングの表面に隙間無く塗ってホルムアルデヒドなどの発散を抑える皮膜剤などがある。ただし、その発散抑制の性能や効果についてはまだ明確でないものもあるので、よく調べて選択してほしい。
8 ベイクアウト方法
ベイクアウトは、室内の建材の温度を高くすることにより、建材から強制的に化学物質を発散させて排出する方法だが、原因とされた建材から発散した化学物質が、本来問題のない建材に吸着され、新たな発生源となってしまったり、ベイクアウト後に発散量がかえって増加してしまったりする等、効果にばらつきがみられる。したがってベイクアウトの実施については、慎重に検討することが必要である。
9 対策の実施
すでに入居している住宅で、入居者が住んだままで原因とされた建材の除去工事や24 時間換気システムの設置等を行う場合は、工事中の粉塵や化学物質が入居者の健康に被害を与えないように充分注意しなければならない。この場合、工事部分と居住部分をできるだけ遮断し、工事部分は専用の排気扇で強制的に換気するなどの方法をとる必要がある。また、原因とされた建材を取り替えるために、新たに準備した化学物質の発散の少ない建材を化学物質濃度の高い空間に放置したり、発散量の多い他の建材と接して置いたりすると、化学物質を吸着してしまう場合があるので、保管の方法にも充分注意してほしい。外壁に新たに給排気口をあける場合は、筋交いの位置を避ける。天井裏に換気ダクトを増設する場合、ダクトが納まらないからといって、梁などに孔をあけたり、削ったりして納めることは避ける。対策工事の実施後は、養生期間を十分に確保する。
10 対策効果の確認
対策の施工後(養生後)に、化学物質の濃度をもう一度測定して、期待通りの低減が実現できたかどうかを確認する必要がある。もし、濃度が低減していなければ、もう一度原因調査にもどって対策を考える。
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